【こたえ】
3【解説】
媒介語とは、外国語として習っている言語(目標言語 TL: target language) を理解するために使う、補助のことばです。たとえば中国人学習者に日本語文法の説明をするときに中国語を用いれば、中国語が媒介語となります。今回はその使用で「不適切」なものを選ぶ問題です。
1は時間の経済性、つまり説明や理解のための時間がもったいないときは媒介語を使う、というもので、これは理にかなっています。前回に示した帰納的なアプローチは、学習者にこれってどう意味だろう? というワクワク感を与えられますが、時間がかかることは確かです。媒介語でさっと説明すればすぐ済むし、理路整然と進みます。
2もその通りです。媒介語に頼ってそればっかり使っていては、肝心の目標言語の運用がおろそかになってしまいます。媒介語は料理のスパイスのように、本当に必要なときにちょこっと使う、または授業内で「ここまでは媒介語だけど、ここからは目標言語だけ」ときっちり線引きをするなどの工夫が必要です。
3ですが、「聞いてください」などの教室の日本語は使用頻度が高い上に学習の初期から多く触れるので、目標言語を使うのが普通です。ですので、これが適切でない、つまり正解です。
最後の4は適切な使い方です。初級段階でも社会文化的な事項の説明は学習者に必要になるときがあります。でも限られた語彙と文型ではそんな込み入った話はできないので、ここは媒介語に頼らざるを得ないでしょう。
【解説】
『日本語教育のスタートライン』p. 408
『日本語教育のミカタ』 p. 6