2020/01/12

011)平成30年度 試験I  問題1(8)熟字訓

【こたえ】
 1

【解説】
 熟字訓というのも聞き慣れないことばですね。
 言語学(というか日本語学)での定義は
・漢字連続を構成する単字とその読みとの間に対応関係を求めることができないもの
 となっています。別名を「慣用読み」と言います。
 たとえば普通に読んでいるし、ニュースにでも出てくる「為替(かわせ)」ですが、これは丸ごとでこう読む、という約束で成立している読み方で、「為」が「かわ」などと、分けて読むことができません。わたしの趣味の世界で言うと「ゲシュタルト」であります(検定には出ないので忘れてください)。

 歴史をさかのぼると、1973(昭48年)の内閣告示第一号(このときに音訓の読み方で改定が行なわれました)に初めて「熟字訓」という語が登場し、「玄人(くろうと)」とか「雑魚(ざこ)」など106語がリストとして掲載されました。

 では以上を踏まえて問題を見ていきましょう。
 2から5の「あずき」「みやげ」「あした」「しない」はいずれも上と同じ熟字訓ということになります。ところが1の「こども」は、「こ+とも」で連濁こそ起きていますが、普通に一字ずつの読み方の組み合わせになっていますね。
 というわけで正解は1となります。

 ついでに「当て字」と熟字訓は何が違うか、ちょっとだけ書いておきます。
 熟字訓は当て字の下位カテゴリー、つまりその一種で、読みが訓読みとして見なされるものだけです。当て字にはほかにも種類があり、たとえば「麦酒」などは「ビール」という外来語を当てています。
 何でこんなことが起きたのかというと、漢字を輸入したときに、ある漢字に対応する概念があれば問題ありませんでした。たとえば「そら」は「空」を当ててOKでしたが、こういうのを正訓と言います。
 ところが、たとえば「たび」(履くやつ)などは中国語に当てはまる字がなかったので、「足袋」という漢字2つを当てました。これは熟字訓の起こりです。さっきのビールなどは後世に入ってきたものですから、歴史的には新しい借字になりますね。

 当て字や熟字訓は、かなと漢字を両方使うことを決めた日本語の、宿命のようなものです。検定的にはあと国字とか、重箱読み・湯桶読みなどもざっと勉強しておくといいと思います。


【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 60-63

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