【こたえ】
1【解説】
キーワードの「言語内」に関する知識があれば、そこからの推論で解くことができます。この場合の言語とは、外国人学習者がいま身につけつつある言語、たとえば日本語教育なら日本語ですね(=目標言語, target language)。
その「内」での誤りということは、「外」、つまり日本語ではない言語の影響とは関係なく起きる誤用のことです。母語と関係なく起きる誤用です。これが言語内の誤用 (intralingual errors)です。
目標言語を学ぶ学習者は誰でも自分の母語を持っていますから、そこの影響を受ける誤用はたくさん見つかります。たとえば英語を母語とする学習者が「2りんご」などと言った場合、母語の two apples という誤用をする場合があります。これは目標言語である日本語のソトである、英語の世界の語順が生み出して学習者の日本語に影響を与えた誤用です。言語「外」の誤用というべきものですが、これは言語間の誤用 (interlingual errors)と呼びます。
言語内の誤り、つまり正解は1です。これはイ形容詞の打ち消し(~くない)、とナ形容詞の打ち消し(~じゃない)を混同しているので、日本語という言語の枠内で起きています。他の例を考えると、たとえばグループ1と2のテ形を混同して「食べった」などとなる場合も言語内の誤りでしょう。
2は英語の発想である (Could you tell me something?) からやってきた言語間エラーと考えられます。
3は「それ⇔これ」の誤用ですね。日本語の指示詞は「コ・ソ・ア」の3項対立ですが多くの言語では「this-that」のような2項対立なので、この誤用が起きます。
4も英語の発想 (I must come here again.) から生じたと考えられます。
では少し進んだお勉強もしておきましょう☆
誤用に関するもはや古典というべき規範的な著作は H. D. Brownが1980年に書いた Principles of Language Learning and Teaching ですが、 ブラウンは同書で誤用がどこから生じるかに関して、上記2つのほかに
・学習によるもの (context of learning)・・・先生の教え方や教材によって生じる
・コミュニケーションストラテジーによるもの・・・やり取りをする上で学習者が何とか通じさせようとする工夫によって生じる(工夫が裏目に出るのですね)
を挙げています。この分類が次の問題と関わってきます。
【参考】
『日本語教育のスタートライン』 p. 458