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【解説】
ここの一連の出題は対義語の種類です。日本語クイズ的に解けるものもありますが、用語の解説を兼ねてやっていきましょう。
ここで問われているのは一方でなければもう片方、という関係の対義語で、典型的なものは「生-死」のような関係です。相補関係にもとづくものです。他の例としては「同じ-違う」がそうです。「男-女」はLGBTの認識が一般的になった現在、検定で取り上げられることはないし、わたしたちもこの関係は相補的と考えるべきではありません。答えですが「ある-ない」の2ですね。
では残りのペアの解説です。
1の「重い-軽い」は、重くない、即、軽い、とは必ずしもなりませんね。「重くもなく軽くもなく、ちょうど良い」という按配の重さがあります。言い換えれば、程度性のあるペアということになります。「暑い-寒い」などがそうで、程度性があるかどうかを見るためには、上で示した「AでもなくBでもなくちょうど良い」に入れて成り立つかどうかをチェックしてください。
次は3の「始まり-終わり」です。これも程度性があるのですが、ちょうど中間にあたる「真ん中」「半ば」といったことばがありますね。これもまた別のカテゴリーです。「100点-0点」であれば中間は50点になります。
最後は4の「前進-後退」です。これは特に動作動詞において、逆方向に移動する単語の対立と考えられます。「入る-出る」「つく-離れる」などがそれに相当します。
似たものとして「結ぶーほどく」「開く-閉まる」などがあります。これは一つの物に働きかける動作の対立で、「そのことをすると反対の状態になる」ペアです。結び目をほどくとバラけて、バラけているものを結ぶと、結び目になりますね。
こうなると対義語の分類っていくつあるの、という話になりますが、これは研究者で異説あるので正確な数は出題されません。ただし、覚えておくべきものとしてはあと2つあります。
一つ目は「そもそも同じやん」のペア(なぜか関西弁)。例えばある坂を上から見れば下り坂、下から見れば上り坂といいますが、そもそもは同じものの視点の違いから生じる名前の対立です。認知言語学的にはすごく面白いです。「売る-買う」もそうで、金銭を払うほうともらうほうですから、第三者が見れば1つのシーンになります。
二つ目は、対立するペアの存在が前提となる反義語です。ちょっと煩雑なんですが「夫-妻」というのは婚姻関係を前提として、「夫妻」でペアになっています。妻に先立たれたら、残念ですがもう夫ではありません。
長くなりましたが、名称で覚えるよりも、医師の国家試験のように、ペア名で続けて暗記しちゃうほうがいいかもしれませんね(たとえば「相補的」って覚えても、試験会場で相補って何だっけ、となったらアウトですから)。今回の流れでいうと
「生死、重軽(おもかる)、ヒャクゼロ、入出開閉、売買、夫妻」でしょうか。
【参考】
『日本語教育のスタートライン』 p. 39
意外と詳しいのが
『日本語教育のミカタ』pp. 31-33
(ここの「黒組」は個人的に好きなネタです)