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【解説】
わたしの専門のところなので気合入れていきましょう。
まず検定で比喩(たとえ)の出題がある場合「~のような」「~みたいな」という
「これタトエですよ」というしるしがあるものは出ません。
・例えている語が何を示しているかの性質の別で仲間はずれを探す
という形式で出題があります。その性質は以下の3つです。
ひとつめ。似ているものに見立てて例える。これをメタファーと言います。でも名称そのものは出ないんじゃないかな? これからの3つを区別できれば十分です。
今回の出題で行くと1がそれに当たります。
「追い風」を言い換えると、企業が発展する上で後押しとなるような現象のことですね。ここではつまり、降って沸いたような、自分たちにはオイシイ現象を、背中を押してくれる風に見立てているわけです。いわば、さしたる努力をしなくても自分を前に進めてくれる、という特性が両者に共通している、つまり特性が似ているわけです。
これは特性が似ているわけですが、もっと分かりやすいのは、見た目が似ているものです。目玉焼きは本当に人の目を取って焼いちゃうわけじゃなく(こわいよー)、あの料理のカタチが人の目玉に似ている、つまり形態が似ているわけです。パンの"耳"もそうですよね? でもこれはかなりストレートな比喩なので、検定で出るメタファーは、特性とか働きが似ているものになると思います。
ではふたつめ。何かに隣り合わせて例える。これをメトニミーと言います。メタファーとちょっと似ていますが、これも用語を覚える必要はありません。両者の違いがわかれば、この分野の検定勉強は8割終わったようなものです。
この「隣り合わせ」は空間的な隣、時間的な隣に分かれます。
空間的な隣の代表として「入れ物⇔中身」の隣り合わせがあります。たとえば出題の4は
黒板を本当に消しちゃうわけではありません。それじゃマジックです(見たいけど)。そうではなく、黒板という「字の入れ物」で、中身の字をあらわしている訳です。お風呂が沸いたと言う場合は、浴槽というお湯の入れ物で、中身のお湯を示していることになります。そして5の永田町も、町と言う入れ物で、中の人をあらわします。永田町は国会があるので、中の人とはこの場合、代議士とその関係者ということになります。
もう一つの隣り合わせの代表は「全体⇔部分」をあらわすもので、出題の3がそれです。
洗濯機を回す、を文字通りに捉えると、4隅のどこかを支点にデカい機械をクルクル回すことになります。それじゃ宴会芸です(見たいけど)。そうではなくて、ここでは中のモーターを回すことになります。扇風機が廻っている、というときも同じですね。
あとは2と5です。2は「生み出す人や場所→産物」を示すものです。産物と言っても野菜などではなく、人が作りだすものすべてで、ここでいう漱石とは漱石の著作です。ベートーベンは聞かない、というときのベートーベンも同じです。
では時間的な隣ですが、検定的には出る確率、低そうです。一応例を挙げると、たとえば、あの選手は今期を最後にユニフォームを脱ぐ、などという場合です。ユニフォームは試合が終わればいつも脱いでいると思いますが、この場合はその脱いだあと、時間的に隣り合った日々、つまり引退後の日々を示します。
さてみっつめ。これは大きな類と具体的な種の間で例えるものです。専門用語はシネクドキ。ずいぶん難しそうですが、以下をしっかり読めば大丈夫です。
大きな類と言うのは、図鑑シリーズの表題だと思ってください。「のりもの図鑑」「魚類の図鑑」のようなものです。
そして具体的な種とは、その表題の中にあるさまざまなものだと思ってください。乗り物ならバスや電車、魚ならマグロやサメをさします。
この二つの間で「本来、類で言うことを種の名前で言う」「本来、種でいうことを類の名前で言う」のがこの例えです。例を挙げると「サランラップ」は家庭用化学ラップ製品の一種なのですが、ラップ類全体を指すほど有名なので、100均の店で安い「○○ラップ」を買っても「サランラップを買った」と言えます。これが「類→種」の例です。また、「明日のご飯はパスタだ」と言う場合は「ご飯」はもともとの意味は炊いたお米なのですが、食事一般の大きな「類」を示すことばに転じてますね。これが「種→類」です。
では検定的にまとめておきましょう。
まずメタファー(類似に基づく)は基本なので、これとメトニミー(隣接に基づく)との差異を問う、今回のような問題が「仲間はずれ」では基本になります。次はメタファーと「類⇔種」のシネクドキとの差異が可能性があります。メタファーなしの出題はまずないと考えて良いでしょう。
【参考】
『日本語教育のスタートライン』pp. 332-337