【こたえ】
3【解説】
ここから初級の指導に関する問題となります。まずは指導の基本的な立場に関する設問です。もちろんキーワードは「帰納的」で、これの反対が「演繹的」であることは解答に必須となります。
・演繹・・・一般的、普遍的な事項から個別的・具体的なことをみちびく(明示的)
<たのしい覚え方> 難しい理屈がエンエんとつづく
・帰納・・・個別的、具体的なことから、一般的・普遍的なことをみちびく(暗示的)
<たのしい覚え方> キノウ(昨日/帰納)のことだから具体的に覚えている
地味な覚え方も学んだところで、実際の問題を見てみましょう。初級の指導におけるこの概念の差は、
・演繹・・・文型などのルールを先に教えてから個別の文の紹介や練習をする
・帰納・・・数多くの例に触れてから文型などのルールを見つけさせる
ことをほぼ意味します。英語教育で言えば「受身形とはbe動詞+過去分詞(+by 行為者)である」ことを示してから個別の文にいけば演繹的アプローチ、逆に受身形の文をたくさん示してから(身振り手振りのジェスチャーとか絵や写真も動員)学習者が、これってこういうことかな、と理解に至るのが機能的アプローチになります。
すると、1は「効率的な文法規則が指導できる」なので文型を面倒な手続きなくざくっと先に紹介してしまうので、これは演繹的になります。
2は無作為な例文、つまり教材用に「加工」された文(=教えやすく、学びやすいがホンモノではない)を使わない、とありますが通常、初級の指導ではどちらのアプローチでもわかりやすい加工文を使うので、これはどちらにも合致しません。
3が正解です。キーワードは「発見プロセス」です。上の段落の「これってこういうことかな」の言い換えです。
4は「原理的な文法説明」という演繹法の基本が述べられていますので、これは排除できますね。
ここからは検定用の記述ではありません。
わたしは個人的には、加工文ではなく、実際に使われた(マスメディアの使用も含む)、まぎれもない本物の用例(これに対して加工文は「作例」)を多く示して、学習者に考えてもらう帰納的なアプローチが良いと考えています。ほぼすべての学習者は教材の authenticity (本物さ)を好むものだし、できる・できないに関わらず「この教材は本物か否か」を見抜く目は持っているからです。
【解説】
『日本語教育のスタートライン』pp. 407-409
『日本語教育のミカタ』 pp. 79-80