2020/01/13

014)平成30年度 試験I  問題1(11)「こと」の用法

【こたえ】
 5

【解説】
 用法の間違い探しというのは、要するに意味が違うものを探せばいいので、虚心に頭の中で朗読(というのも変な言い方ですが)すれば解けます。

 1から4はみな「そうしたほうがいいよ」という忠告の意味を表します。そして5の「残念なことだ」の「こと」は"所業・行為・できごと"などの意味ですから、これが「仲間はずれ」で正解です。
 
 でも頭で考えてそうだなー、というのは心もとないので、形式から抑えていきましょう。そもそも「こと」は「物事」という語が示すように、何かが存在したり、あるいは動いたりすることを捉えたことばです。万物は流転するので、「こと」ということばでその流転のある部分を把握しやすく留めた、とでも考えればいいでしょう。英語だと不定詞の名詞的用法の to とか、動名詞の -ing に当たります。下の比較で考えてください。

(1)Swimming is fun.
(2)泳ぐことは楽しい。

 つまり、動詞の辞書形(国文法の終止形)やナイ形に「こと」がつくと、「~という行ない」「~しないという所業」という意味になります。

 ところが、ここからちょっと面倒なんですが、この用法が文末に「だ」「です」などのコピュラ(ここではコピュラが何かは書かないので下の本を読んでね)と一緒になると、急に"経験を経た爺さんが物がわかったように若者にしゃべる感じ"(←偏見)になります。これが1から4の用法で、3などは特にその感じが出ていますね。
 話し手の心の中の態度を示す文法カテゴリー(このことばの意味も下の本でお願いします)を「ムード」と言います。「忠告しつつ実はちょっと威張るムード」とでも言いましょうか。
 なおこの威張り爺さん(←誰だよ)は、さっき書いた「物事」のもうひとつ、つまり「もの」でも登場します。たとえば
(3)そういう時は静かにするものだ。
 のように、「当然」のムードが出てきます。

 なぜ爺さんはこうも威張るのでしょうか? 「こと・もの」はただの名詞化をうながすことば(これを「形式名詞」と言います)だし、コピュラは主語と述語をつなぐ紐みたいなもので、どっちにも威張る要素はありません。
 これは要素分解できることではなく「ことだ・ものだ」という形式そのものが意味を持つ、という考え方をします。
 こういう捉え方をする文法を構文文法と言います。これは先の勉強へのご参考ということで。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 151-152
 コピュラの意味は 同 p.80
   文法カテゴリーについては同 p.143

2020/01/12

013)平成30年度 試験I  問題1(10)イ形容詞の作り方

【こたえ】
 4

【解説】
 この問題、わざわざ検定を受ける方で間違える人はいるんでしょうか?
 でも面白いことに気づきますね。正解、つまり仲間はずれの「黄」はキで音読みですが、残りの「あお・くろ・あか・しろ」はみな訓読みです。つまりことばとしてはこれらの方が古いことになります。ちなみに、「い」をつけてそのままイ形容詞にできるのはこの4つだけです。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 87-88
011)平成30年度 試験I  問題1(8)熟字訓

【こたえ】
 1

【解説】
 熟字訓というのも聞き慣れないことばですね。
 言語学(というか日本語学)での定義は
・漢字連続を構成する単字とその読みとの間に対応関係を求めることができないもの
 となっています。別名を「慣用読み」と言います。
 たとえば普通に読んでいるし、ニュースにでも出てくる「為替(かわせ)」ですが、これは丸ごとでこう読む、という約束で成立している読み方で、「為」が「かわ」などと、分けて読むことができません。わたしの趣味の世界で言うと「ゲシュタルト」であります(検定には出ないので忘れてください)。

 歴史をさかのぼると、1973(昭48年)の内閣告示第一号(このときに音訓の読み方で改定が行なわれました)に初めて「熟字訓」という語が登場し、「玄人(くろうと)」とか「雑魚(ざこ)」など106語がリストとして掲載されました。

 では以上を踏まえて問題を見ていきましょう。
 2から5の「あずき」「みやげ」「あした」「しない」はいずれも上と同じ熟字訓ということになります。ところが1の「こども」は、「こ+とも」で連濁こそ起きていますが、普通に一字ずつの読み方の組み合わせになっていますね。
 というわけで正解は1となります。

 ついでに「当て字」と熟字訓は何が違うか、ちょっとだけ書いておきます。
 熟字訓は当て字の下位カテゴリー、つまりその一種で、読みが訓読みとして見なされるものだけです。当て字にはほかにも種類があり、たとえば「麦酒」などは「ビール」という外来語を当てています。
 何でこんなことが起きたのかというと、漢字を輸入したときに、ある漢字に対応する概念があれば問題ありませんでした。たとえば「そら」は「空」を当ててOKでしたが、こういうのを正訓と言います。
 ところが、たとえば「たび」(履くやつ)などは中国語に当てはまる字がなかったので、「足袋」という漢字2つを当てました。これは熟字訓の起こりです。さっきのビールなどは後世に入ってきたものですから、歴史的には新しい借字になりますね。

 当て字や熟字訓は、かなと漢字を両方使うことを決めた日本語の、宿命のようなものです。検定的にはあと国字とか、重箱読み・湯桶読みなどもざっと勉強しておくといいと思います。


【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 60-63
012)平成30年度 試験I  問題1(9)テ形の音便化

【こたえ】
 2

【解説】
 テ形という概念は、まあ大丈夫ですね。
   日本語教育の勉強を始めたばかりの皆さんには
ーおぉ外国人向けの日本語教育文法は違うなー、
 と思わせる語ですが、母語話者なら動詞のマス形・辞書形からテ形を作るのは簡単ですから、これは省略します。

 それでは音便とは何か、ですが
・その方が言いやすいために、ある語の途中や終わりの音が他の音になる現象
 です。検定的には動詞の音便が取りざたされることが多いのですが、名詞でも形容詞でも音便は数多く見られます。「学校」だって「がくこう」が変わって「がっこう」ですから。これは促音(小さい「っ」)が入った、促音便です。

 では問題に行きましょう。
 もともと動詞の1グループ、つまり国文法でいう「五段動詞」は五段の名のとおり、動詞の活用がカ行・マ行などの「あいうえお」の音で活用します。
たとえば「書く」だったら「書ない・書ます・書・書ば・書う」ですね。
 で、テ形というのは、そのイ段に「て」をつけるものです。上の例だったら「書きて」ですね。ちょっと古文っぽい響きです。でも現代日本語では、これは「書いて」で、キがイに転じてますね。これをイ音便といいます。
 問題の中からイ音便をさがすと、1の「歩く」は「歩きて→歩いて」となります。イ音便はこれ一つなので、他の音便も探しましょう。

 次はさっき出てきた促音便、つまりイ段のところが小さい「っ」に変わっちゃうやつです。すると見つかるのが、4の「鳴る」です。「鳴りて→鳴って」ですから。この仲間もひとつだけ。あと3つ残っています。
 で、3の「飲む」、5の「呼ぶ」に着目しましょう。さっきと同じようにイ段を見ると「飲みて」「呼び手」ですが、今は「飲んで」「読んで」とイ段のところは「ん」に化けました。「ん」は撥音といいます。あまり親切じゃない専門書には「はねる音」と書いてあります。どこが跳ねてるの? 何か元気なの? と思っちゃいますが、まあ「ジャンプ」の「ん」とでも思ってください。で、イ段が撥音に変わるので、これらは2つとも撥音便です。

 最後に残った「話す」を見ると、「話して」。音便なしです! 
 デカ長、コイツが犯人です、じゃなくて正解です!(←誰だよこいつ)

 まとめると、1グループ(五段動詞)の音便化には、上でやった順でいうと
・イ音便
・促音便
・撥音便
 の3つがあり、それと音便にならないのがあるわけです。

 こういう問題に習熟するには、アクセントのパターンと同じで、自分でほかの仲間を探すのがいちばん良い方法だと思います。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 87-88

2020/01/11

010)平成30年度 試験I  問題1(7)漢字の読みとつくり

【こたえ】
 5

【解説】
 「ごんべん」の漢字が5つ、並んでいます。
 この5つはいずれも左右に分けることができます。この何かと何かを足して一字にした漢字のほとんどは、片方が漢字の意味が属するカテゴリーを示し(たとえば「にんべん」なら人カテゴリー、「さんずい」なら水カテゴリー)、もう片方が漢字の音を示します。これを「形声文字」と呼ぶのは学校で習った方も多いでしょう。

 この知識を踏まえて漢字を見ていくと、全部「ごんべん」なので「言葉カテゴリー」なのは良いとして、右側を見ていくと「義・方・呉・忍・十」と単独で漢字になるものばかりです。

 では、この5つを音読みにしてみましょう。
・義は「ぎ」で、ごんべんが付いた「議」も同じ読み方
・方は「ほう」で、ごんべんが付いた「訪」も同じ読み方
・呉は「ご」で、ごんべんが付いた「誤」も同じ読み方
・義は「ぎ」で、ごんべんが付いた「議」も同じ読み方
 ところが、
・十は「じゅう」ですが、ごんべんが付いた「計」は「けい」である
 ことから、これが「仲間はずれ」とわかります。

 つまり「計」は形声文字ではないことになります。
「ごんべん」は元々、「山」「川」と同じ象形文字でした(非漢字圏の学習者が最初に興味を持つ、アレですね)。で、右の「十」は「一がたくさんある」ことを示したそうですが(なぜ縦棒が付くと"たくさん"なのか、わたしはわかりません。厚切りジェイソン先生と同じです why Japanese people?)、このように
・漢字を構成する点や線が、数や位置といった抽象概念を表している字
 を「指事文字」と呼びます。"コトを指す字"ですね。指示じゃないので(変換するとこれが最初にでますので)気をつけてください。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 58-63

2020/01/10

009)平成30年度 試験I  問題1(6)転訛形

【こたえ】
 2

【解説】
 転訛という語は日常ではまず見聞きすることはないですね。定義ですが、
・同じだと認められる語句が、異なる音形で現れるもの
 のことです。典型的な例は「食べてしまった」が「食べちゃった」になるようなものです。研究による分類も進んでおり、もはや転訛形のほうが標準と思われるもの(たとえば
「食べるんだ」←元は「食べるのだ」)や、転訛形になってもフォーマルさが落ちないもの(たとえば「食べてる」←元は「食べている」)などがあります。

 1の「やめとく」ですが、元の形は「やめておく」。つまり動詞の複合において転訛が生じています。
 3の「何してんの?」は「何しているの?」で、同様に「して+いる」の複合における転訛です。文型シラバスでは「テ形+いる」の方が通りが良いですね。
 4の「もう帰らなきゃ」は「もう帰らなければならない」で、ちょっと複雑ですが、動詞「帰る」がナイ形になってイ形容詞と同じ活用の振る舞いをし(例 安くなければ)、それに動詞「なる」が複合しているので、理屈は上の2つと同じです。
 5の「やっちゃいなよ」は何だかタランティーノの Kill Bill みたいですが(別にわざわざ見る必要はありません。長いし)、「やってしまいなよ」、つまり「やる」「しまう」の動詞の複合に関わります。

 で、正答の2ですが、これだけが動詞の複合による転訛ではありません。これは促音を入れて強調する転訛で、言語学では音転訛あるいは音声転訛形といいます。例としては「とっても」(とても)、「やっぱり」(やはり)などがあります。

 一般に転訛形は音が減少してフォーマルさも減少するのですが、音転訛のときは上記の例や「だめって言った」(だめ言った)のように、長音節化してわずかに音数も増加するものもあり、興味深い現象です。


2020/01/09

008)平成30年度 試験I  問題1(5)短縮語形成

【こたえ】
 3

【解説】
 これは語形成に関する特別な知識がなくても解けますね。むしろ、個々の語の意味を知っているかどうかがポイントになります。

 1のスタメンは「スターティング・メンバー」で、前件の語と後件の語の2字分を取って造語したものです。外来語のこうした縮約は4拍が好まれることが多いようです。
 2は「アカデミック・ハラスメント」で、ハラスメント系を「Xハラ」とするのはセクハラ、パワハラなどだいぶ広まってきた印象です。
 4は「リモート・コントローラー」で、もはや元の語が意識しにくいほどに根づいています(多くの人は「リモート・コントロール」と答えそうです)。ちなみに「コン」の省略による縮約は「パソコン(コンピューター)」「ファザコン(コンプレックス、ただし英語は the Electra complex)」など数多く見られます。
 5は「プロフェッショナル・レスリング」で、プロフェッショナルの縮約「プロ」は日本語の接辞になっており、「プロ集団」など混種語も観察できます。さらに言うとプロレス大好きな女子は「プ女子」と呼ばれるそうで、縮約がさらに進みました。これはいわゆる「腐女子」からの連想を受けているのでしょう。
 で、例外は3の「エアロビ」で、ご存じのとおり「エアロビクス」の一語の縮約ですので、こちらが「仲間はずれ」です。

 今回は外来語の縮約でしたが、本来的に日本語で多いのは「都響(=東京都交響楽団)」のような漢字の縮訳語で、出題もありそうです。「東フィル(=東京フィルハーモニー)」のような混種語もあります。さらに英語の IT (Information Technology), CIA
(Central Intelligence Agency) などは特に頭文字語(アクロニム)と呼ばれます。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 33-36

2020/01/08

007)平成30年度 試験I  問題1(4)アクセント

【こたえ】
 1

【解説】
 標準的なアクセント問題です。
 1以外はすべて中高型のアクセントパターンですが、1の「いっきいちゆう」のみは平板型になっています。

 東京アクセントに習熟していない方は、NHKニュースや名作の朗読などのシャドーイングをお勧めします。ただシャドーイングはかなり疲れる活動なので、自分の言い方との差異に気をつけてじっと聞くだけでも勉強になります。
 個人的なお勧めは「表現読み」の実践者、渡辺知明さん。手始めにこちらなどいかがでしょうか。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 202-207, 特に207ページの表
もっと最初から勉強したい方は
日本語教育のミカタ』 pp. 52-55
006)平成30年度 試験I  問題1(3)音節数

【こたえ】
 2

【解説】
 前の問題とは違い、こちらは現代日本語の発音に即した良問です。
 問題を解く鍵は「長音節」にあります。

 音に関する現代日本語の標準的な規範は「かな1文字が1つの短音節」ですね。たとえば「ねこ」は2つの短音節(2音節)、「さくら」は3つの短音節(3音節)からなっています。
 ところが短音節に「ん」「っ」「-」がつくと、これが長音節になります。
 たとえば「神田(かん+だ)」「切手(きっ+て)」「蒸気(じょう+き)」はいずれも長音節1つと短音節の計2音節からなっています。

 ちょっと複雑なのもやってみましょう。「国交断絶」はどうですか? 「こっ+こう+だん+ぜ+つ」ですから「長(こっ)長(こう)長(だん)短(ぜ)短(つ)」の計5音節となりますね。

 ここまでわかれば、もう解けます。
・1の「ちょうせん」は「長+長」の2音節
・2の「きょういく」は「長+短+短」の3音節
・3の「さんぽ」は「長+短」の2音節
・4の「けっか」も「長+短」の2音節
・5の「かたん」は「短+長」の2音節
 というわけで、2が正答となります。

 なお実際は長音節になるものは上記だけではないのですが、まずはこの問題が理解できるようにしてくださればと思います。

【参考】
日本語教育のスタートライン』 pp. 175-177
もっと基礎から勉強したい場合は
日本語教育のミカタ』 p. 60
005)平成30年度 試験I  問題1(2)二重母音の取り入れ方

【こたえ】
 5

【解説】
 (1)に続いて、また「二重」の話ですが、これは率直に申し上げて、あまり良問とは言えません。というのは「二重母音」という用語自体が定義も実例もきっちり境界線が引けるものではないからです。でもまあ、仕方ないので進めますね。

 二重母音というのは、
・ひとつの音節中に二つの母音があるもの
 が一応の定義です。ところが専門の論文、たとえば小野(2011)などにあるとおり、運用される音から二重母音を判断するのは、とても難しいものです。音声記号での表記と、実際に個々の人がそれを発音するときのズレや乖離がはなはだしいためです。
 ちなみに日本語の二重母音は簡単に長音に転じてしまうので、やはり表記と運用の間にはズレがあります。「訂正」はかな表記こそ「ていせい」ですが、実際は「てーせー」と発音されます。

 でもまあこれは本問題とは関係ないので(脱線ごめんなさい)、理屈に即して進めます。
 出題は二重母音の「取り入れ方」なので英語の二重母音を日本語に「取り入れた」とき(つまり英単語を外来語表記にしたとき)仲間ハズレはどれでしょう、ということです。着目するのは、それぞれの単語の長音のところ、表記では「-」に当たる部分が元の英語ではどうですか、ということです。

 1は「ゲーム (game)」で音声記号は [geim]、2は「セールスマン (salesman)」で発音記号は[seilzmən]、3は「メールボックス (mail box)」で[meilbɑx]、4は「ホットケーキ (hot cake)」で[hɑtkeik]、つまりいずれも二重母音として [ei] が入っています。ところが「レインブーツ (rain boots)」は [reinbt] で、これは二重母音ではありません。
 よって5が正答となります。

 なんか英語の発音記号の問題みたいだなー、と思った方、そのとおりです。
 試験会場でこの問題を見て正解にたどり着いた方は、おそらく現代英語の二重母音が規範的には [ai [əʊ [iə [ʊə [aʊ [ɔi [eə [ei] の8つである、という知識は持たず、単純に「げーむ」「せーるす」「めーる」「けーき」は伸ばすところが「え」の音だなあ、でも「ぶーつ」は「う」の音だなあ、じゃあ違うコレを選ぶか、といった頭の使い方をしたと予測できます。こうなると二重母音がどうこう以前の話であり、気の利いた小学生でも解ける問題になっています。
 加えてホットケーキは和製英語に近く、実際は pancake であること、ブーツもデフォルトとしての単語は boot であることなどを考慮すると、この問題が出題後の反省会(たぶんあります)で多少の批判を浴びたことは、私のような音声学が専門でない者にも想像がつきます。

 個人的には二重母音よりもさまざまな表記と音のズレ、あるいは半母音とわたり音などを勉強するほうが、現場ではずっと役に立つと考えます。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 195-196.

004)平成30年度 試験I  問題1(1)二重調音

【はじめに】
検定の問題をここにそのまま貼り付けるのは違法ですので、すみませんが凡人社の過去問やご自分が持ち帰ったものを参考に、ごらんください。

【こたえ】
 4

【解説】
 ご存知のとおり、問題1は所定のタグ(上で言えば「二重調音」)から設定されるカテゴリーの外にあるものを答える問題です。言い換えれば「仲間はずれはどれだ問題」です。
最初のこれは、古い入試英語のような、発音記号から音を類推する問題です。まずは二重調音というのがなんだかわからないと話にならないので、その解説から行きます☆

 まず調音というのは、音を調整することではなく、喉とか口腔の歯茎とか舌とかを使って、言語の音を作ることです。調理は料理を作ること、調音は音を作ることです。
 で、"二重"なんですが、このことばをちょっと見ると
ーこのおせち料理は二重の段になっている。
 のように2つの音が連続してみるみたいに思ってしまいますが、そうではなくて、二重調音というのは
・口の中で2つの操作をして作られた音
のことです。調理の見立てで言うと、煮豚だったら豚肉を「煮る」1回で済みますが、酢豚だと豚肉を「揚げる」、さらに「炒める」と、2回するようなものです。つまり音の作り方としては複雑になります。

 で、正答の [w] なんですが、これ、日本語のワ行の音とは違います。「音声仲間はずれ探し」の場合、
・音声記号で日本語の音を間違えやすいものが出題されやすい
 のです。日本語のワ行の音は音声記号では [ɰ] で表記されます。ダブリューみたいだけど、下が尖ってなくて右下がびよーんとしてますね。これが日本語の「ワ」の子音です。では2つの音の正体を、並べて比べてみます。


・正答のほう、つまり英語の [w]  のほうは…有声両唇軟口蓋接近音
・一方、日本語のワ行、つまり [ɰ]  のほうは...有声軟口蓋接近音

 長くてイヤになりますね。徳川次郎三郎源朝臣家康みたいに長いです(これは徳川家康の本名)。でもがんばって、両方見比べてください。英語のほうは「両唇(りょうしん、上下のクチビル)」という語が多く入っていますね。
 この呪文のような子音の名前は、徳川家康と同じで、ちゃんと順番があります。
 まずは、
その音が声帯を震わせる音(有声・・・例は「ダ」)か震わせない音(無声・・・例は「タ」)か
 次は
その音をどこで作るか(調音点といいます)
 そして
・その音をどうやってつくるか(調音法といいます)
 です。
 で、英語を見ると調音点が「両方のクチビル」「軟口蓋」と2つありますね。これが二重調音であるという理由です。
 
 では具体的に考えていきましょう。
 日本語の「わ」(つまり音声記号で"びよーん"のやつ)は、どうやって作るのでしょうか? ちょっと「泡、泡、泡」と3回口に出して「あ」「わ」の違いを観察してください。「わ」の時はほんの気持ち、上あごの奥の柔らかいところ(ここが軟口蓋です)が狭まる感じがありますね? つまり軟口蓋とその下のところを近づけて(=接近させて)作り出す音が、有声軟口蓋接近音なのです。

 次に、英語の What? を発音してみましょう。アメリカ英語っぽい、大げさな音作りをしたほうがわかりやすくなります。部屋のドアを閉め、誰も自分を見ていないことを確認してから両手を Oh ! のように広げて "What?" を言ってみてください。
 日本語のときの「びよーんの"わ"」の口の形では、良い音(良いのか?)は出ませんね?
ちょっとクチビルをすぼめて、勢いよく呼気(吐く息のことです)を出さないと、What?
は作れません。つまり英語の [w]  は、日本語の「わ」に加えて、両唇も調音に使わないと作れない、二重母音ということになります。

 いちおう残りの選択肢の音、つまり調音点が1つの音の名前も書いておきますね。

 まず1の [ɸ] は、無声両唇摩擦音で、日本語では「ふ」の子音です。音声記号の形が漢字の「中」に似ているので、わたしは東京外国語大学がある場所にちなんで「ふちゅう」と学生に覚えてもらっています。

 次はの [kʰ] で、これは無声軟口蓋破裂音の、かつ有気音。これは難しいです。有気音(とその反対の無気音)というのは中国語の発音の道具立てです。音声記号の右上に小さい h がついているのは、有気音のしるしです。

 さらにの [ʃ] は無声後部歯茎摩擦音ですが、これは英語の発音記号で見たことがある方も多いと思います。シュッ、のように聞こえる音でスペリングでは sh で書かれる語、たとえば shock とか dash の音がそれです。

 最後の5、[ç] は無声高口蓋摩擦音。これは日本語の「ひ」の子音です。ハ行は非常に曲者ですので調べておくと良いでしょう。


【参考】
日本語教育のスタートライン』p. 179-191

065)平成30年度 試験I  問題8 問5 ソーシャルサポート 【こたえ】 4 【解説】  ソーシャルサポート (social support, 社会的支援)とは心理学のことばで、 いろいろ困った人に周りの人が支援すること です。それさえわかれば、正解に近づくこ...