2020/01/08

004)平成30年度 試験I  問題1(1)二重調音

【はじめに】
検定の問題をここにそのまま貼り付けるのは違法ですので、すみませんが凡人社の過去問やご自分が持ち帰ったものを参考に、ごらんください。

【こたえ】
 4

【解説】
 ご存知のとおり、問題1は所定のタグ(上で言えば「二重調音」)から設定されるカテゴリーの外にあるものを答える問題です。言い換えれば「仲間はずれはどれだ問題」です。
最初のこれは、古い入試英語のような、発音記号から音を類推する問題です。まずは二重調音というのがなんだかわからないと話にならないので、その解説から行きます☆

 まず調音というのは、音を調整することではなく、喉とか口腔の歯茎とか舌とかを使って、言語の音を作ることです。調理は料理を作ること、調音は音を作ることです。
 で、"二重"なんですが、このことばをちょっと見ると
ーこのおせち料理は二重の段になっている。
 のように2つの音が連続してみるみたいに思ってしまいますが、そうではなくて、二重調音というのは
・口の中で2つの操作をして作られた音
のことです。調理の見立てで言うと、煮豚だったら豚肉を「煮る」1回で済みますが、酢豚だと豚肉を「揚げる」、さらに「炒める」と、2回するようなものです。つまり音の作り方としては複雑になります。

 で、正答の [w] なんですが、これ、日本語のワ行の音とは違います。「音声仲間はずれ探し」の場合、
・音声記号で日本語の音を間違えやすいものが出題されやすい
 のです。日本語のワ行の音は音声記号では [ɰ] で表記されます。ダブリューみたいだけど、下が尖ってなくて右下がびよーんとしてますね。これが日本語の「ワ」の子音です。では2つの音の正体を、並べて比べてみます。


・正答のほう、つまり英語の [w]  のほうは…有声両唇軟口蓋接近音
・一方、日本語のワ行、つまり [ɰ]  のほうは...有声軟口蓋接近音

 長くてイヤになりますね。徳川次郎三郎源朝臣家康みたいに長いです(これは徳川家康の本名)。でもがんばって、両方見比べてください。英語のほうは「両唇(りょうしん、上下のクチビル)」という語が多く入っていますね。
 この呪文のような子音の名前は、徳川家康と同じで、ちゃんと順番があります。
 まずは、
その音が声帯を震わせる音(有声・・・例は「ダ」)か震わせない音(無声・・・例は「タ」)か
 次は
その音をどこで作るか(調音点といいます)
 そして
・その音をどうやってつくるか(調音法といいます)
 です。
 で、英語を見ると調音点が「両方のクチビル」「軟口蓋」と2つありますね。これが二重調音であるという理由です。
 
 では具体的に考えていきましょう。
 日本語の「わ」(つまり音声記号で"びよーん"のやつ)は、どうやって作るのでしょうか? ちょっと「泡、泡、泡」と3回口に出して「あ」「わ」の違いを観察してください。「わ」の時はほんの気持ち、上あごの奥の柔らかいところ(ここが軟口蓋です)が狭まる感じがありますね? つまり軟口蓋とその下のところを近づけて(=接近させて)作り出す音が、有声軟口蓋接近音なのです。

 次に、英語の What? を発音してみましょう。アメリカ英語っぽい、大げさな音作りをしたほうがわかりやすくなります。部屋のドアを閉め、誰も自分を見ていないことを確認してから両手を Oh ! のように広げて "What?" を言ってみてください。
 日本語のときの「びよーんの"わ"」の口の形では、良い音(良いのか?)は出ませんね?
ちょっとクチビルをすぼめて、勢いよく呼気(吐く息のことです)を出さないと、What?
は作れません。つまり英語の [w]  は、日本語の「わ」に加えて、両唇も調音に使わないと作れない、二重母音ということになります。

 いちおう残りの選択肢の音、つまり調音点が1つの音の名前も書いておきますね。

 まず1の [ɸ] は、無声両唇摩擦音で、日本語では「ふ」の子音です。音声記号の形が漢字の「中」に似ているので、わたしは東京外国語大学がある場所にちなんで「ふちゅう」と学生に覚えてもらっています。

 次はの [kʰ] で、これは無声軟口蓋破裂音の、かつ有気音。これは難しいです。有気音(とその反対の無気音)というのは中国語の発音の道具立てです。音声記号の右上に小さい h がついているのは、有気音のしるしです。

 さらにの [ʃ] は無声後部歯茎摩擦音ですが、これは英語の発音記号で見たことがある方も多いと思います。シュッ、のように聞こえる音でスペリングでは sh で書かれる語、たとえば shock とか dash の音がそれです。

 最後の5、[ç] は無声高口蓋摩擦音。これは日本語の「ひ」の子音です。ハ行は非常に曲者ですので調べておくと良いでしょう。


【参考】
日本語教育のスタートライン』p. 179-191
003)日本国際教育支援協会による問題例 試験III  問題9-問1


【こたえ】
 1

【解説】
 異文化トレーニングというのは、言語教育とは違うものです。
 もともとは母文化が異なる人たちがひとつの社会で暮らしていくことが当然の国、たとえば米国で、ビジネスや教育において摩擦を起こさないように考えられたプログラムです。民間主導で研修を請け負う会社も数多くあります。日本では海外駐在が決まった会社員やその家族に対して行なわれてきた事例がありますが、インバウンドの旅行者や定住する外国人が増えてきた地域などでは注目を集めています。

 さて、検定的に(これ多いな)異文化トレーニングで大切なことは2つあります。それは、
・誰も置いてきぼりにしない
・いつでもするし、いろんなことをする
 というものです。

 前者はまあわかりますね。いろいろな人を気持ちの上で受け入れるためのトレーニングをする上で、最初からあなたはダメです、入れません、ということは理念として矛盾してしまいます。これで3と4は排除できます。

 2番目のポイントは、一回受けただけでは不十分だし、そういう環境にいないと忘れてしまうので、行なう時期は多彩だし、活動内容も同様に多彩だ、ということです。
 異文化トレーニングで目立つのは、どうしてもバファバファのようなゲームなのですが、実際は座学あり、セルフスタディによる内省あり、グループでのケーススタディありと数多くの方法が組み合わさっています。これで2が排除できて、正解の1が残ります。


【参考】
日本語教育のスタートライン』p. 486

2020/01/07

002)日本国際教育支援協会による問題例 試験II  問題2-1番

☆音声はこちらで聞けます

【こたえ】
 b
【解説】
 モデル音声の内容は「すみません、調査目的は何ですか。」で「調査目的」のところがポイントになっています。
 外国人の日本語音声で問題になる部分はいくつもありますが、まずは
・長さ(拍の問題など)
・高さ(アクセントの問題)
 に着目しましょう。
 「調査目的」は「調査+目的」の複合名詞であり、音節が長くなるので、こりゃあ両方だな、と予測がつきます。でもそういう考え方は悪い意味でテクニックっぽいので(でも使える)、順に見て行きましょう。

 まず「ちょうさ」ですが、外国人の音声では「ちょさ」のように聞こえます。通常は「ちょ+う+さ」で3拍ですが、「ちょ+さ」で2拍に聞こえますので、拍の長さを問題とするb, dに答えは絞られます。

 次に複合名詞の場合、後続する語のアクセントが変わる場合と変わらない場合があります。たとえば「東京近郊」は「東京」と「近郊」の元のアクセントを合わせて発音しても元のままですが、「東京会場」は「会場」の元のアクセント(平板型)が「か」で高く、「い」で低い頭高型になります。

 調査目的の「目的」も同じように平板型から頭高型に変わっていますので、拍のみならず、アクセントの下がり目でも問題があることになります。
 複合名詞になったときのアクセントの変化は4パターンあるのですが、「変わる・変わらない」の別については問われますが、その4パターンの区別(これは頭高・尾高など一語ごとの区別ではありません)については、検定での出題はないと考えてよいでしょう。

【参考】
日本語教育のスタートライン』pp. 215-216

 
001)日本国際教育支援協会による問題例 試験I  問題4-問1
【こたえ】
 4
【解説】
 コミュニカティブ・アプローチというのは頻出用語のひとつですが、実際に授業でも見たことがないと、
ーなんか「コミュニケーション」と似たことばだなー
 と思う以外、見当もつかないと思います。

 そこでコミュニカティブ・アプローチと聞いたら、10人ほどの外国人学習者がゲームをしたり、または役割を決めて会話をしたりしている(=役割遊び role play) ところを想像してください。
 楽しそうですね? でも、どうしてでしょうか?

 ある外国人が「日本語が話せる」というとき、それはたとえば一人で
ー昨日、名古屋へ行きました。
 などと「文を口にできる」という意味ではありませんね。やはり自分が話し手なり、聞き手なりになって、相手と「会話」をしてこそ日本語が話せる、日本語ができる、となるはずです。これを教室での出来事に置き換えると、先生のあとについて何か文が言える、というだけでは、その文をおぼえて自分の部屋で再現できるかもしれませんが、「話せる」わけではない、ということがお分かりいただけるでしょう。

 コミュニカティブ・アプローチは、たとえば先生が一定のルール、たとえば学習者2名に対して
・陳さんはカフェラテを注文したがコーヒーを持ってこられた客
・ティムさんは注文を間違えてしまったウェイター
 などと演じる役目を指示し、あとはその役柄に応じて自由に相手と話したり、相手の日本語を聞いたりする活動です。
 つまり、その枠内では、意味のある会話をしなければならず、それが教室の外での日本語のやりとりにー少なくともひとりで「昨日、名古屋へ行きました」を口にするだけよりー近いわけです。

 問題にある「意味交渉 (negotiation of meaning)」とは、
会話において、互いにわからないことがないように工夫して話すこと"
 です。ルールの枠内で好きに話すのであれば、その目標に向かって陳さんもティムさんも工夫するので、ここは4が正解となります。

 では残りの選択肢はどう排除できるのでしょうか?
 まず、厳密には違うんですが、「検定的世界」の中では
・コミュニカティブ・アプローチの反対概念はオーディオ・リンガルである
 と、ざっくり考えてください。

 別の問題で触れると思いますが、オーディオ・リンガルとは耳と口を使って先生の言うことを忠実にリピートしたり、その内容をちょこっと変えて言ったりする活動で、さっき出てきた「意味交渉」などはありません。
 なんでそんな単調な活動をするのかというと、オーディオ・リンガルを考えた人は、外国語をなんか話さなくちゃいけないときに、普段から話す習慣づけをしていればビビったり口ごもったりしなくて済む、という信念があるからです。

 つまり
・オーディオ・リンガルのキーワードは「習慣」である
 と言い切って大丈夫です。で、これはさっき書いたようにコミュニカティブ・アプローチの反対なので、2と3は排除できるわけです。

 では1ですが、これをわかりやすく書き直すと
・学びの最初のころは日本語で聞いてわかることを先におこなって、日本語で話すことの気持ちの上でのプレッシャーを避ける
 ということです。
 コミュニカティブ・アプローチではルールの下でどんどん話させるので(聞かせもしますが)、これは排除、ということです。

 目標言語って何だとか、意味交渉がわからない、とかいろいろありますが、まずは上記を理解していただければOKです。ホリエモンではありませんが「何もなかった自分に小さなイチを足していき、それをベースに次に進んでいく」のは、理にかなった学び方です。

【参考】
日本語教育のスタートライン』p. 438
もっと初めから学びたい場合には
日本語教育のミカタ』p. 139
 


065)平成30年度 試験I  問題8 問5 ソーシャルサポート 【こたえ】 4 【解説】  ソーシャルサポート (social support, 社会的支援)とは心理学のことばで、 いろいろ困った人に周りの人が支援すること です。それさえわかれば、正解に近づくこ...